読書には結末が無い

まさのりのノート

『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由』を読んで

2023年5月現在、おそらく日本で一番SNS上で叩かれている(?)芸人、安田大サーカスのクロちゃんの書籍。副題は『クロちゃん流モンスターメンタル術30』。

ツイッターで一言呟くと「クズ!」「嘘つき!」などの罵詈雑言を浴びる彼のメンタルセルフケアについて書かれている。僕も自分自身や自分の関わることへの何気ない呟きにメンタルを左右されることが多く、自身のメンタルを守るための術を学びとりたいと思い、この書籍を読み始めた。

書籍中では彼の半生なども書かれていて、普段テレビでは見れないクロちゃんを少しだけ知ることができる。とはいえ、本書の内容のほとんどは、あの知りたくもない(笑)ゲスなクロちゃんのままだ。

SNSでの誹謗中傷に対する注意喚起も一章を割いて訴えている。普通の板前さんも、写真を撮られ、悪意を持ったコメント共に写真をSNSにアップされれば炎上する恐れがあるという比喩を使って、SNSでは誰もが簡単に誹謗中傷の加害者にも被害者にもなってしまう旨などをとても熱く訴えかけている。

ひょっとしたら、あなたの子供が知らない間にネットいじめの首謀者になっている恐れすらある。下手したら、その誹謗中傷で相手が命を落とすかもしれない。

正しいことをやっていると自分は考えているんでしょうけど、それ、あなたがやる必要が本当にありますか?
非難が行き過ぎているってことはないですか?
そもそもあなたの情報ソースは正しいんですか?

しかし、ここでは、僕の興味範囲であるメンタルセルフケアだけにフォーカスした感想を共有したい。この記事の文末に、読後にまとめたノートの画像を貼り付けるが、実はこの書籍、ノートに残していないオマケのようについているミニコーナー「番外編」に本質が詰まっているように感じた。そこで、この記事では番外編の部分を中心に紹介する。

他罰的思考

悪いのは自分じゃない。周りの環境に恵まれていないだけ──。

メンタル管理の基本は「上から目線」。自分に向かって飛んでくる批評をまともに正面から受け取るから病んでしまう。

怒って怒鳴ってくる人がいれば「この人は説明スキルがないから、こうして怒鳴り散らすしかないんだな。上にたつ器じゃない。哀れな奴だ」と自分より人間性能が低いという風に認識を切り替えて見下すそうだ。ネットでアンチが絡んできても、「ディスるにしたって、ボキャブラリーが貧困すぎる」「いい年してかまってちゃんなんだろうな」「自分がムキになって、このレベルの人たちと言い争うようになったらおしまいだ」と上から目線で傍観する。

誹謗中傷だけではなく、自分の失敗などでメンタルが追い詰められたときも「不幸や失敗は自分のせいじゃなく、他人や周りの環境のせいにする」他罰的思考で、無責任に自分の失敗と向きあわないようにする。

 

おそらく、良識のある人、いや、多くの人は「上から目線」や「他人や周りの環境のせいにする」はよくないことだと思っているはず。僕も「他責にしないように心がけること」は自分にも言い聞かせているし、周囲の人にもお勧めしたいこと。でも、クロちゃんが、メンタルケアのために「上から目線であれ」「自分が悪いんじゃない」という姿勢を持つように言っているわけだ。きっと正しいはず。あの、日本一SNS上でアンチに叩かれているクロちゃんが言っているんだから。

確かに、何か悪いことがあっても、自分が悪いわけじゃないと考えるとスッと楽になる瞬間はある。良くないなと思いながら、毒をもって毒を制すように、他罰的思考を用いて、他人や周りがどう悪いのかを自分に言い聞かせることでメンタルダウンを回避することはできそうだ。あくまで、心の中で。

そしてクロちゃんは、精神的に余裕のあるときに、大いに反省するように促している。メンタルが崩壊しそうな瞬間にだけ他罰的思考をして、とにかくメンタルダウンになる状況から逃げて、その後にちゃんと反省する。また、アンチの意見にも一応耳を貸してやる上から目線の度量と強かさを持ち、自分の成長の糧になる意見は聞くようにする。

 

クロちゃんは言う、「日本人はもっと不真面目に生きた方がいいと僕は真面目に思いますね」。


メンタルが落ちそうになったとき、失敗や不幸を心の中で他責にしておくのは、きつい一時期を通りすぎるための重要なメンタルケアになりそうだ。あくまで、「自分の心の中で、一時的に」を守っておくことができれば。

メンタルを保つ法則「3箇条」

  • 努力は絶対にしない!
  • 損だけは絶対にしたくない!
  • 僕は絶対に悪くない!

クズをクズたらしめる、ゲスをゲスたらしめる、素晴らしい3箇条だ。清い。そういうクロちゃんの姿に「図々しさを持ち、生きづらさを感じないだろう」と憧れる人は、きっと憧れる。

努力は絶対にしたくない!

クロちゃんはわざわざゲスな表現を選んで使っているような気がする。エクスペクテーションコントロール、期待値を事前に最適化しているのだろう。僕もよく使うので、とても共感するやり方だ。

本質としては、「(努力を感じないほど)自分の好きな道をどんどん突き進み、誰も追いつけない地点まで到達する」ということ。そのためだったら、やりたくないことはやらない。避ける。

そういうことだ。性格が歪んでいるからか、もしくは、過度に期待をされないように、ちょっとだけ人に嫌われるような表現を使う。ビジネス書などでときどき言及されるような言い回しを避け、少し嫌われるような言い方で言う。流石だ。

損だけは絶対にしたくない!

この「損」というのは、長期的に考えて自分にとってマイナスになるようなこと。で、そういうことは絶対やらない、ということだ。自分の嗅覚で、できなそうだと分かったら、そのリスクを避ける。そうでない場合は100%全力で取り組む。そういう文脈で、損する人とは最初から絡まない。行ったら損する場所には最初から行かない。危機管理能力。

僕は絶対に悪くない!

これは、もう、つまり、他罰的思考。大事なポイントとしては、ちゃんと「言い訳」をつくることだそう。責任転嫁にも一流から五流まであるらしく、クロちゃんレベルになると「ここまでやったんだから仕方がない」と相手に納得してもらうとのこと。その為に、台本は読み込むし、共演相手の下調べなども綿密に行うとのこと。

ここでも、エクスペクテーションコントロールを行っているように感じる。

書籍の最後の方にクロちゃんと仲の良い元AKB48高橋みなみさんのインタビューがある。その中で、『本当にただのゲスだったら、ゲス芸人なんてできっこない』と言いながら、クロちゃんがどれだけストイックで、どれだけアンチ・コントロールを行っているかを語っている。

「怠惰を求めて勤勉に行き着く」というが、まさにクロちゃんのことなのだろうと思う。

まとめ

生まれて初めての書籍レビュー記事を書いたかもしれない。その最初の一冊がお笑い芸人、安田大サーカスのクロちゃんの書籍『日本中から嫌われている僕が、絶対にやまない理由』。

SNSなども発達し、誰でも誹謗中傷をする側にもされる側にもなれる時代。ニュースにはコメント欄がつき、ニュースに向かってつぶやいたコメントがニュースの中の人にちゃんと届き、ナイフのように刺さってしまう時代。クロちゃんのモンスターメンタル術は今の時代を生きるみんなに必要なスキルかもしれない。

僕も、あまり傷つきたくない。

読書ノート

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